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ううう・・・。寒い。船着き場で座っているご婦人お2人は、時折ドリフ笑いをしつつのんびりとされていた。防寒対策バッチリなのがうらやましい。
乗船時間は約50分。一度乗ったら、戻る迄下船は出来ない為に体調管理をしなくては。近くの自動販売機で暖かいお茶を買い、カバンに忍ばせておいた舞浜帝国のウィンドブレーカーを着る。背中には世界の恋人がプリントされ、この遠く離れた土地で自分は浮いていた。帝国お膝元である近所では犬の散歩時に着ている人すらいるというのに・・・。全く持って、所変わればなのである。

しばらくすると、出航していた屋形船が戻ってきた。
先に乗船されていた方々が次々と下船され、続いて我々が乗船。早くに並んでおくと船首の方に座れる自由席だ。
靴を脱ぎ、入口の格子戸を潜って室内へ。150cm程度の私ですら「低いなぁ」と感じる戸ではあったが、中の天井はもう少し高く、膝立ちをして丁度良い程度。畳が敷かれ、赤の毛氈がまた趣を感じる。ありがたい事にブランケットをお借りできたので寒さに強い "舞浜巻き" をしておいた。

窓部分には柱はなく、襖を自由自在に左右に動かす事ができるので、豪快に開け放すこともできたけれど、何となく皆様自分の前で視界確保程度に開けられていた。
静かに出航。行きは右手に石垣が見える内濠の約3/4を往復する。船首のデッキには船頭さん乗り、名所等をガイドしてくださりながら船はゆったりと進む。動力はモーターだけれど、手漕ぎ並の緩やかなスピードだ。
定員は12名で、5グループが乗船。先ほど迄お2人だったご婦人方は、お友達と合流されて4名に。船着き場で座っていらっしゃったお2人は「疲れたから船待ちしている」という事で残られていたそうだ。
船頭さんは「どちらからいらっしゃったんですか?」と各グループに質問され、京都・大阪等関西圏の地名があがる。私らが「千葉です」と言うと「まぁ〜。遠い所から」と周囲の方々もびっくりされていた。いえいえ、千葉からでも(ひこにゃんに会う為ならば)滋賀は案外近いものですよ。



窓から見えるのは、道を歩いていた時とまた違った景色。
道路には緑色の自転車タクシー。道を行き交う人も屋形船を見て微笑んでいる。窓から入る風はやっぱり冷たいけれど、このゆったり感はたまらなく気分が良い。はぁ〜・・・。この空間、奥ゆかしくて私好み。
屋形船の天井の低さも私にはジャストサイズなのである。

そう。
どうして屋形船は平ベったい形で、天井が低いのか。

「内濠に掛る橋が低く、橋脚の幅が狭いからです。」

一つ目に潜る橋は、「表門」に続く「表門橋」。
橋の手前でモーターを切り、惰性で進ませる。モーター音もしなくなるしばしの静寂の中、船頭さんは集中されているようで、背中が凛々しかった。
「表門橋」を潜る。
船の右側は橋脚ギリギリでも左側ですら50cm程度の幅しかない。いかにタイトなのかがよく判る。
橋の裏側には金属製のパイプが通っていた。そう言えば、お城内部に向かって伸びている電線は見かけていない。多分ライフライン用のパイプかと思われる。

「表門橋」をこえると、次の「大手橋」の間の石垣に犬走りが見られる。
犬走りとは二段になっている石垣の事で、石垣と石垣の間が土手になっている部分をこう呼び、濠を渡り城内へ攻め入ろうとする敵を防御する一種の緩衝地帯だそうな。この例はあまりなく、江戸城の桜田門から三宅坂の間の部分と、会津若松城の一部にある程度。
彦根城は豪華絢爛な史跡ではないし、規模が姫路城のように広大なものではないけれど、こうしてお城の事を知れば知る程、世界遺産に認定されれば良いのにと思ってしまう。

道路側の石垣には船からでしか見れない、一石の墓石が組まれているのを見る事ができる。曖昧な多角形の石の間に、正方形にカットされた石があるのだ。何故に墓石が組まれたのかは謎だけれど、工夫(こうふ)が「先祖代々でお城を見守って行くぞ!」と組み込まれていたら、さぞかし素敵だろうなぁと胸がワクワクした。
が、、、よくよく考えると、石垣にする石を持ってきた先の安土城や長浜城では、石が足りないと墓石迄も使っていたとの事。リアルに「使われた」だけの後者なのでしょう・・・。南無(-人-)

「大手橋」を潜り、内濠で飼われている白鳥や黒鳥に餌をやるご家族を微笑ましく見つめ、森が切れて天守がよく見える切り株ポイントを通過すると、船は間もなくUターン。
今度は左手に石垣を眺めつつ戻る。

水辺。桜。石垣。・・・風情ある景色。

あっという間に船着き場に到着。時計はしっかり50分進んでいる。もしや時間泥棒がやってきたのかと錯角する程、この50分は短く感じた。

優雅な船遊び。違う季節に来た時も、乗船したいなぁ。


肌寒さも増し、ひこにゃんグリも終了している事も手伝って散歩をしながら宿に戻る。
ぷらぷらぷらぷら。
観光マップにない道をどんどんと歩く。趣のある旧家屋を眺め、路地をくねくねと曲り、駅前に到着。
お部屋で熱いお茶を飲み、のんびりと休憩。日めくりを更新し、朝のひこにゃんグリを思い出す。
朝一番でひこにゃんを独占出来た事。いつも携帯に付けている年期の入ったミニひこにゃんぬいぐるみを持ってくれた事。餌に大喜びしてくれた事。"エアー刀"でアクティブに動いて殺陣をしてくれた事。とろけるようなポーズを数々決めていった事。それがまた柔らか餅で・・・。→
コレ
あぁ。ひこにゃん可愛すぎる・・・( ̄▽ ̄)~゜
いかんいかん。このままひこにゃんを思い出していたら、お尻から根が生えて動けなくなってしまう。夕食でひこにゃんも大好物の「お箸できれるお肉」食べに行かないと。
と思っていても・・・今日は活動的だったから、なかなか動き出せない。
夕食だけ食べに行くか、はたまたまたお城周辺のライトアップも合わせて見に行くか・・・。明日も彦根に居るしなぁ・・・(- -; 悩む事しばし。
とりあえず、お城ちょっと眺め経由で「お箸できれるお肉」を食べる事にし、機材を片手に、いざ出陣!!

夕食の「お箸できれるお肉」の事を考えてたったかたったか歩く。
いつも通り突き当たりの護国神社を左折し、ひこねキャッスルホテルを右に。
すると・・・・



うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ
なんぢゃこりゃゃゃゃぁぁぁぁっっっっっっっ

写真のセンスも腕も持ち合わせていないので、その場の臨場感を切り取って来る事はできなかったけれど、ライトアップされた妖艶な桜に、石垣。そして中濠水面に写り込む夜桜!!!!!
昼間あんなに長い時間石垣や桜を見ていたのに、こんな情景が想像できなかっただなんてっっ
頭の中からはすっかり「お箸できれるお肉」の事は消え去り、思い付く限りライトアップされている場所をめぐる。


「埋木舎」に続く小道と、左手に見える中濠と「佐和口多聞櫓」。
←内濠に入り、今朝通ったり潜ったりした「表門橋」。
シャッタースピードが遅くなっているから、画像はブレブレの連続。カメラの三脚を持っていない事を、初めて悔んだ瞬間が何度も何度もやって来る。
この際、構図が気に入らないから撮らないなんて贅沢な事は言っていられない。とにかく三脚の代わりになるものを見つけてはパチリとやる。低めの街灯の上。桜の幹。時には地面。・・・限界っす(T-T)
そんな必死になっている私を横目に、夜桜見物用の屋形船が静かに運行していた。夜桜見物で船遊びとはうらやましい。

日が出ている間に船で通った経路を、道路から眺めつつ歩く。森の間から、時折白亜の天守閣がちらっと顔を見せる。

「大手橋」横の、見張り台のように作られた石垣の上から、桜が内濠めがけて飛び込まんとするように枝を垂らしていた。なんと雅な・・・。
昼間の屋形船から見た時とは反対側からだけれど、これが同じ桜の木なのである。(上↑の白鳥の画像の下が昼間のもの)

ライトアップされた天守閣がどうしても見たくて、昼間教えてもらった森が切れて天守がよく見える切り株ポイントまで行く。徒歩で行くと、結構な距離があるらしくなかなかその切り株が見つからない。

ほどなく、遂に到着。
ようやっと白亜の天守閣が完全に顔を見せる。純白のお城はなんでこうも綺麗なんだろう。
手前には桜の枝。奥が天守。
この辺りはライトアップされているものがないようで、屋形船は手前でUターンしているようだ。勿体ない。
来た道を戻り、冗談でお城に潜入できる道を探して「大手橋」を渡って内部に。
街灯はなく、地蔵堂の明かりを頼りに大手門の手前まで行くものの、門は固く閉ざされ登る事はできない。当たり前か。

諦めて地蔵堂前に戻ると石垣上に登れる石段を発見。この辺にも桜がたくさん植栽されており、対岸からの薄明かりで足場を確認しながら登る。

登った先がコレまた絶景!!

目の前には濠に垂れている桜の枝。眼下には内濠。これらが対岸からライトアップされているのだ。
身を乗り出すように、カメラを石垣にくっつけて撮影。→
もっともっと撮りたかったけれど、大粒の雨が降ってきた!!!
急いで機材を片付け、転ばないように石段をおりる。
「大手橋」まで戻ってきたけれど、雨足はなかなか弱まらない。ならば食事をしようと夢京橋キャッスルロードに行くも、ほぼ総てのお店が閉店(泣) 営業時間を見てみると、どのお店もClose時間が早いのであった。
雨宿りをしつつ、アーケードのある中央商店街を辿ってお城駅前商店街に濡れずに到達。日々散歩している甲斐がありました。

夕食は商店街にあるお弁当屋さんで購入。カラアゲ丼がとても美味しいし分量があるのに、お手ごろ価格でありがたい。
それにしても、、、彦根の夜は静かだ。夜22時でも、駅前はこんな感じ。
我が家の側も、帝国がクローズするとこんな感じで似てるけどね(笑)

明日こそは、「お箸できれるお肉」を食べ、彦根城天守前広場(勝手にキャッスルフォアコートと命名)でひこにゃんに会える事を願い、床につくのでした。


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